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Ron Mueck
Evan Penny

このアーティストは主にシリコンを素材として、限りなくリアルな人物の胸像(もしくは全身像)を作ります。多くの場合、それらの人物は等身大のおよそ2倍、もしくはそれ以上の大きさで、異様な迫力をもって我々に迫ってきます。頭髪部には本物の人間の頭髪が使われ、顔に刻まれた皺やそばかす、むき出しの背中に浮き出たしみに至るまで、拡大鏡を通して微細に映し出された人体像が、突如目の前に現れたような錯覚を覚えるのです。このめまいに似た感覚は、厚みを抑えた、2次元と3次元の境界を行き来するようなレリーフ状のフォルムとも無関係ではありません。もう1つの特徴的な作風として、これらの胸像がまず左右から押しつぶされ、そして上下に引き延ばされたかのような、不自然なフォルムが挙げられます。この奇妙な変型は、デジタル写真の加工過程を彷彿とさせます。写真という存在が我々の思い描く「リアル」「具象」の土台としてあるのではないかという現状に、アーティストの「具象」彫刻は根底から揺さぶりをかけているのです。
リアルな肖像がしばしば作家の身近にいる実在の人物をモチーフとしているのに対して、ペニーの作り出す人物は多くが”No One ? In Particular”と題され、機械的にナンバリングされています。このスーパーリアリスティックな肖像はいかなる物語をも顧みず、我々に見えているはずの現実と鏡像の無限ループを、ラディカルに暴きだそうとしているのかもしれません。

Ann Hamilton