風に身をまかせる

今日は風が強い。雨がさっき少し降ったみたいだ。日中はかなり暑かったが、この時間はクーラーもいらず、窓を開ければどこかのテレビの声が風で運ばれてくる。


お腹が空いた。
まだご飯を食べていなかった。
イヤフォンをそっとつけ、コンビニに直行しようと思ったが、外は家の中の何十倍も気持ちがいい。ちょっと回り道をしよう。
supercarのYUMEGIWA LAST BOYがさらに気持ちいい海辺へと、自転車を走らせる。今はこの曲しか聞きたくない。


海のにおいがする気がする。


リピートモードにすればいいのだが、曲が終わるたびに巻き戻す。めんどくさい。だが、機械にやらせるのもな。
意味のないことに気をとられている分だけ、自分を取り巻くあらゆる意味から逃れられる。
……楽だ。




今回は少し早めに巻き戻すか。次の曲の頭さえも不要だ。この曲だけでいいんだ。
今、波音が混じった音楽は最高に心地いい。爆走する車の音も聞こえてくる。だってここはドライブにはもってこいの観光地だからね。こんな時間なのに人は結構いる。




自分の服のにおいがする。




釣りをする人がいる。
俺は自転車をまたぎながら携帯をいじる。こんなに文字打つの久しぶりだな。高校の時は意味もなく速打ちとか競ったりしたな。
もう、何回リピートしたかな。これだけでよかったはずだが、さすがにそろそろ飽きてきたな。いったん違う曲にしよう。
うん。
携帯のコマンドを押すこで、自分の行動が決まるみたいだな。そういうのも楽だよな。


今日はそろそろ帰ろう。


ピっと。


帰り道、赤い光がくるくる回っていた。
俺には関係ないことだった。
ここぞとばかりに外車が並んでいた。そばの歩道には、若者が列をなしていた。