見えるか見えないかの瀬戸際に

三月いっぱいで終わった。
最後の日、多分僕が一番最後の最後までいた。
不便なことは多々あったが、
まあ細かいことは抜きにして、
僕を結構優遇してくれたし、
いろいろな要求に答えてくれた。
立地的にもっとすごいところに行けそうだし。
どうもありがとうでした。


三月とか四月だからそんなふうに転換期だったり、じゃなかったりする。
知識、経験、着想。
これ三大要素。
ちょっと、やります。




        自分への戒めとして

誰のせいにも出来ねぇし したくねぇ
「夢」別名「呪い」で胸が痛くて
目ぇ覚ませって正論 耳が痛くて
いい歳こいて先行きは未確定
きっと映画や漫画の見過ぎ
甘いコトバ聴き過ぎで
時間のみ過ぎ
ガキの好きそうなことばっか病みつき
この男、誇大妄想家につき
くじけなさは異常ほとんどビョーキ
ゼロからスタートは一緒
荷物は放棄
失うもんは最小得る方が大きい
財産は唯一最初に抱いた動機
気分はヤケにトウが立ったルーキーズ
午前零時
新しい日の空気
オレは古着
だが洗い立てのブルージーンズ
そのドアを開いて振り絞る勇気


                             by 宇多丸

なあ、お前と飲むときはいつも白○屋だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。
俺が貧乏浪人生で、お前が月20万稼ぐフリーターだったとき、
おごってもらったのが白木屋だったな。
「俺は、毎晩こういうところで飲み歩いてるぜ。金が余ってしょーがねーから」
お前はそういって笑ってたっけな。
俺が大学出て入社して初任給22万だったとき、
お前は月30万稼ぐんだって胸を張っていたよな
「毎晩残業で休みもないけど、金がすごいんだ」
「バイトの後輩どもにこうして奢ってやって、言うこと聞かせるんだ」
「社長の息子も、バイトまとめている俺に頭上がらないんだぜ」
そういうことを目を輝かせて語っていたのも、白○屋だったな。


あれから十年たって今、こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり白○屋だ。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。
別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。
なあ、別に女が居る店でなくたっていい。
もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店を
いくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?


でも、今のお前を見ると、
お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、
俺はどうしても「もっといい店行こうぜ」って言えなくなるんだ。
お前が前のバイトクビになったの聞いたよ。お前が体壊したのも知ってたよ。
新しく入ったバイト先で、一回りも歳の違う、20代の若いフリーターの中に混じって、
使えない粗大ゴミ扱いされて、それでも必死に卑屈になってバイト続けているのもわかってる。
だけど、もういいだろ。
十年前と同じ白○屋で、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ。
そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ。


                                                                 by アフロディーテファンクラブ