お兄ちゃんにあったよ

 今日ぼくは、お兄ちゃんに会いました。今年の3月に会ってから会ってなかったのでひさしぶりでした。
 夜の9時東京えきに来いといわれたので、ぼくはがんばって電車にのりました。そしたら早くつきすぎるみたいだったのでこまったなあと思いました。お兄ちゃんが来るまで何もすることがなかったので、そのまま電車にのることにしました。どこかたんけんがしたかったからです。だけど、そのうち電車の中でひまになったのでまたこまったなあと思いました。うたでもうたいたかったけどお母さんに言われたことを思い出してやめました。そして、なんだかねむくなってきたのでねることに決めました。


 論文を書いた直後だったことや、昨日の朝からパンしか食にしておらず貧血気味だったこともあり、気力的、体力的にやられていた僕は電車に揺られながらぐっすりと眠り世界へ入り込もうと試みた。さすがにすぐに寝ることができた。


 いってー。
 やべー、かなりあほ面で寝てまったかも。ここに頭置くと電車がめちゃ揺れたとき頭打つなー。違う体勢で寝よ。やっぱねみーわ。…ん?おっ、隣におったはずの男がスカートに変わっとるやん。いえーい、いえーい。いい感じの足なんでねーの?いいねー。スカートとミュール的にもセンスよさそうやし、スタイルよさげやん。やべ、あんまじろじろ見とるとやばいやばい、寝た振りしよ。てかさーこれで顔よかったら最高やん。顔でら気になんなあノ。顔良かったら、寝たふりしながらうざがられん程度にもたればいいし。どーしよっかなー。まあ普通、ここまで来たら顔見るしかないな。よし顔見たろ!気合いで見るか。よーおーーし!!っせーえ、っておいおいちょっと待てや。そんな力いっぱいで見て目があったら気まずいやん。ここは落ち着いてゆっくり横向こう。いや。でもそれでもやっぱ気まずいよなあ。まあこの際目が合ったら、「おめーなんか、興味ねーよ」的な目でカバーするか。でもそんなことしたら寝た振りしながらもたれれんなー。あーどーすりゃーいいんやて。じゃあもう寝る?やぁーそりゃだめやろ。……。……っ。よし、じゃあ今俺は寝とることになっとるんやで、次の駅で電車が着いたときに、あれぇここはどこやろう的な顔でねーちゃんの顔を見ながら後ろを振り向き、外を見る振りをしよう。今電車内混んでないで前向いたまま外見れるけど、まあそんなこたーいいわ。てかこの電車、車内に行き先とか表示されとるやん。……げ。まあ、でもそこはあれっすよ。俺今起きたばっかです、ぶっちゃけ寝ぼけっちゃってます、やばい乗り過ごしちゃったかも、ここどこだ?あせっちゃってます、みたいな要素を演技に盛り込めば全然オッケーやん。
 じゃあ、確認。俺は電車が次の駅に着くと同時に目を覚ます。そして、慌てるようにして現在地を確かめるために後側の窓越しに外を見る。その時、すかさずフェイスちぇええっく!んでとりあえず、なんだまだここか、びっくりしたな、もーうを軽くかます。…うざがられん程度にもたれながら寝た振り、と。よっしゃー準備オッケー♪
 ……おっ、きたきた。そろそろ電車が止まりそうそうやぞ。それでは、カウントダウン開始!いよいよ、ねーちゃん見ちゃうよー、ごー、よん、さん、にぃ、いち、ぜろぉー。それっ。
 『俺今起きたばっかです、ぶっちゃけ寝ぼけちゃってます、やばい乗り過ごしちゃったかも、ここどこだ?あせっちゃってます』
 ・・・あ゛。うん、寝よ。


 ぼくはいやなゆめをみていました。でもどんなゆめだったかはわかりません。それはわすれてしまったからです。お母さんが前に言っていました。
 「ゆめっていうのはすぐにわすれてしまうもんよ。こわいゆめみたってすぐにわすれちゃうから大じょうぶなのよ。」
「でもいいゆめもあるよ。それもわすれちゃうの?なんかもったいないんだね、ゆめって。」
その後、お母さんがなんて言っていたのか、もう覚えていません。ぼくは、その時ゆめについて分かったような気がしました。でも、やっぱよく分かんないです。
 何のゆめをみていたのかひっしに思い出そうとしました。お母さんの言った通りでした。そういえばお母さんにもお兄ちゃんと同じぐらい会ってません。まだぼくはねむかったので、もう一回ねようかなとぼくは思いました。


 僕は電車の揺れと誰かの携帯の着信音に呼ばれて起きた。頭はすっきりしたようなしてないようなだるい感じだった。さっき書いた論文のテーマについてもう一度考えてみた。神様と人間、人間と動物の間には導く・導かれる関係がそれぞれ一方向のものとして固定されてきた西欧文化。そんな西欧に始まった自然環境保護運動の思想的バックボーンには、地球上に約百五十万種いると言われている動物の種は、共通の起源を…………。


 ・・・・・・。